田舎にかえろう
犬の鳴き寝入り。とでもいうのか私の実家の犬はよく吠え、そしてよく眠る。
さらによく私の指を噛み、眠るのである。悪い奴ほど良く眠るのだ。
私も負けじとこら、と怒鳴りつけるなどして、躾を施そうとするのだが、鳴きやまず、それどころか先ほどより、力強く鳴くのである。難儀なことである。
私の実家の犬は、というか、犬は基本的に人間のことを舐めているのだ。舐めているから、吠え、舐めているから噛む。
舐めているのなら、舐めているで、こちらの対応の仕方もあるのだけれど、ごく稀に媚びたりもする。
ペットフードではなく、人間の食べる食事を食おうと必死で取り繕う態度で接してくる。
尻尾をこまめに振る、得意げにお手などをすることで人間の興味を惹き、食事にありつこうとするのだ。
その愛嬌のある仕草に、我々人間共は、つい犬を甘やかし、食事を与えてしまう。
目的を遂げた犬は、食事を終えると、再び傲然と人間を舐めくさった態度を取るのだ。
難儀なことであるなぁ。
ただ、実家を離れてもう5年以上は経つが、思い出すのは、目を剥いて鳴き叫ぶ姿ではなく、ちょこんとお座りをして、お手のポーズをする愛くるしい仕草なのである。
まっこと難儀ではあるが、ゴールデンウィークは実家に帰り、犬を可愛がってやろう。
好きだったミカンを買っていてやると尻尾を振って出迎えてくれるかもしれない。